自転車なお遍路イメージ
2012年春
はじめに
4月28日(往路)
4月29日(88〜86番)
4月30日(85〜80番)
5月1日(79〜70番)
5月2日(69〜66番)
5月3日(65〜62番)
5月4日(61〜58番)
5月5日(57〜52番 復路)

5月4日(晴れ)

●朝からいろいろ迷惑をかける。

京屋旅館支店(7:15/0km/累計437.4km)

朝3時、「うるせーなー!」という声で目が覚める。京屋は、部屋のしきりが襖1枚だから音が筒抜け。イビキがよっぽどやかましかっただろう。こっちもそれから眠れなかった・・・といいながらまた寝たけど。隣の(たぶん自動車)へんろは、5時くらいに起きて、どやどやと仲間と一緒に出ていった。悪いことしたなとは思うが、こればっかりは気をつけていてもなんともならない。すんません。

6時に起きて、6時半からの朝食に。昨日同様、美形の自動車へんろが向かいに。と言っても朝なので、ぼそぼそと挨拶する程度。と、隣のご夫婦の自動車へんろが、宿が取れないという話をされた。僕はこれまでスムーズに宿がとれていたので、「大丈夫ですよ。大きな街に出てビジネスを探せば、どっかありますよ」と話したが、いやいやこれが大間違い。この日の夜、自分で思い知ることになる。

「宿が取れなかったら自動車で寝るかと言ってるんです」。60代半ばぐらいのご夫婦は、奥さんは小柄で可愛い感じ、ご主人はたくましいが、ちょっと甘い二枚目。いかにも仲が良さそうだ。美形の女子も「宿がとれなかったら、一旦広島まで帰ります」という。「大丈夫ですよ」と最後まで根拠のない自信を押し付けてしまった。思い出すだに恥ずかしい。

7時15分、出発。自転車に荷物を装備して支度をしていると、女子が来て「がんばってくださいね」と声をかけてくれる。おじさんデレデレ。だが気を引き締めてスタート。

●山道をスキンヘッドが走る。

60番 横峰寺(9:24/3.1km(歩き除く)/累計440.5km)

最初はしばらく上り、そこから下ってまた上がる。20分ほど走ると有料道路の料金所があった。挨拶をして、自転車を置かせてもらう。ついでにシューズのクリートを外す。屋島寺に登った時、滑って疲れたこので、今夏はクリートを外して登ることにした。クリートなしで歩くと、うん、快適だ。ただ靴と格闘している間に、iPhoneを自転車の荷台に忘れてきてしまった。7時42分スタート。

そんな準備をしている時、クラクションを鳴らすクルマがあった。あ、京屋で一緒だったご夫婦だ。なにわナンバーのワゴンだった。こういう出会いは嬉しい。お互い笑顔で手を振り合った。

歩きやすいといっても、長い坂なので適当に休みながら歩く。途中、前回同様、樹の枝を拾って杖にするが、前回ほど使いやすい木片は落ちていなかった。結局途中で杖は捨てた。休む言い訳にカメラで写真なども撮る。そんなことをしていると、横をスキンヘッドのランナーが走って通り過ぎる。今はやりのフィールドランニング、いやクロスカントリーの練習かな? この道を走って上がるなんて、若さもあるけど、すごい体力だ。

この写真を撮っているとランナーが後ろを走っていった。

しばらくすると降りてきた歩きへんろから話しかけられる。白峯寺と根香寺と、どっちを先に打った方がいいかみたいな話だったような気もするが、あんまり覚えていない。疲れていたので失礼しました。

歩き始めて2時間。横峰寺に到着する。花が綺麗だ。鐘を着いて参拝し、納経所へ。納経帳を出すと「お車ですか?」と聞かれる。「いえ、歩きで」「ああ、下に自転車を置いて歩いてた人ね」(なんで知ってるんだろ?)「ほら、写真を撮ってたでしょ。その時横を走ってました」。ああ、あのランナーがこの坊さんか。「自転車でも登るんですが、今日は混んでいて事故を起こすといけないので走って登ったんです」。

ここでcyokoさんのMTBの話を思い出して「自転車はマウンテンですか?」と聞いてみた。「いえ、ロードです。ロードでもけっこう登れるんですよ」と事もなげに言う。東海林さだおの漫画なら、ショージ君がグヤジーとハンカチを咥えている場面だ。

花とランニングボーサンが印象に残った横峰寺。

9時49分、出発。

●前回と同じ喫茶店でカレー。

ニュースコール(11:45/12.5km/449.9km)

下りはやっぱりラクだ。半分近い1時間で、料金所に着く。荷台に置きっぱなしだったiPhoneもそのまま無事だった。10時50分過ぎ、料金所出発、と思ったらビンディングがキャッチできない。あららと思ったら、クリートを付け忘れてた。道端でクリートを付けて再スタート。

途中、トイレに行きたかったので京屋で停車。「おや、おかえりなさい」と社長に言われ「トイレ借ります」。ついでにスポドリを買って香園寺に向かう。

基本下りなのでラクなのだが、センタースタンドの先がスポークに接触してカラカラ音を立てる。大丈夫だとは思うけど、スポークが切れたら怖いので、また吉祥寺横の自転車屋さんへ。事情を話すと社長は、ネジを締めて問題解決してくれた。料金を払おうとしたら「いいですよ、これくらい」。ありがとうございました。

そろそろ昼が近いので、腹ごしらえすることに。前回カレーを食べた喫茶店にまた入る。なかなか美味しかった。食べている最中に、夫婦の歩きへんろが入ってきた。漫画を読んでいて挨拶のタイミングを失ってしまった。12時20分、出発。

●御影札を2枚もらう。

61番 香園寺(12:28/14.6km/452.0km)

香園寺まではほんのひとっ走り。といっても軽く迷ったが。この辺がiPhoneの限界というか、それを使う僕の限界。また階段を上り、靴を脱いで参拝。座ってお経が読めるのがラクでいい。これだけは他も採用してくれないものか。

慣れたとはいえこの建物、神恵院と並んで違和感ありまくり。参拝は楽だけど。

納経したら、御影札を2枚くれた。あれ、前回も2枚あったっけ?聞いてみると、ご本尊以外に、ここは子抱大師が有名なので、そちらの御影も渡すのだとか。なるほど。13時ジャスト、出発。

●計画の甘さを反省して旅程を1日延長。

59番 国分寺(15:03/39.0km/476.4km)

iPhoneに従って自動車モードで走る。と、道は高速へと続く。だめじゃん。次、歩きモードに変換。元に引き返す。んー、めんどい。とりあえず地図をみて、行けそうな方向へ走る。それから懲りずにiPhone頼りで走る。Mapを見たら、香園寺から国道196号に戻て、一路国分寺を目指すのが一番簡単だったのだが、iPhoneのお陰でちょっと遠回りになってしまった。

走りながら、今回、どこで区切るか検討する。当初予定なら、今日、石手寺で区切る予定だったが、とても松山まで届きそうもない。仙遊寺あたりで区切る手もあるが、なんだか中途半端。というわけで当初予定を1日伸ばして、明日も走ることにする。

最初走った道は旧道だったので、バイパスを通るよりは風景や街並みが眺められてよかったが、逆風がきつかった。おかげで随分ペースが落ちたと思う。疲れてなければ多少の逆風は気にならないが、疲れているとなかなか前に進まない。前回はそれほど風を気にしたことはなかったので、これも逆打ちのせいだろうか。

そのうちさらに走りにくくなってきた。「ひょっとして」と思って靴を脱いでみると、左足のクリートの2つあるネジの片方の位置がずれていた。出発当日に買ったスペシャライズドのこのシューズ、どうもクリートのネジが緩みがちだ。失敗したかも。デザインと機能はいいんだけどね。

途中でバイク屋さんメインの自転車屋さんを発見。空気圧が下がってきたので、空気入れを貸してもらえるか聞いてみる。自転車屋さんのお兄ちゃんは、タイヤを押してみて、「これなら空気圧は大丈夫だよ」という。確かにママチャリなら大丈夫だと思うけど・・・。お礼を言って走る。

国道196号(今治バイパス)に戻る。初めは車道を走っていたが向かい風で押し返されて、のろのろとしか進まない。迷惑をかけないように歩道を走る。

目印にしてきた桜井中学校近くでバイパスから降りる。そろそろ今日の宿を確保しなくては。まずダメ元で仙遊寺に電話してみる。女性が出て「今日は空きはありません」と申し訳なさそうに言う。人気の宿坊だし、仕方がない。宿は今治あたりのビジネスを探すことにして、まずは国分寺を目指す。

ここも小ぢんまりとした札所。人が多く、賑やかだった。

バイパスを降りてすぐに国分寺はあった。何かお祭りがあるらしく、大勢の男衆が集まって、大きな幟の柱を立てていた。なかなかうまく立てられず、騒いでいるのがいかにもお祭り前夜らしくて面白い。ここでカメラが不調。ポケットに入れておいたら、どこかにゴミが詰まったようだ。写真はiPhoneに切り替える。15時30分、出発。

●今回は冷たい雰囲気。え、甘えるな?確かに。

58番 仙遊寺(16:39/48.5km/累計485.9km)

今日の必達目標は仙遊寺を打つこと。ここを打っておかないと、明日のスケジュールが面倒になる。頑張って走る。疲れているせいか、随分遠く感じる。とりわけ山道に差し掛かるともう乗って上がれない。ひたすら押しながら前に進む。

途中、妹から電話が入る。昨日送ったジューシーゴールドのお礼だ。いきなり日常に戻されて、ちょっと気が抜ける。携帯は便利だけど、よし悪しだ。

山門から先が長いと覚悟していたが、その覚悟以上にしんどかった。行けども行けども坂は続く。こんなに坂が長かったっけ?と思うほど。そろそろ5時が近づいてきたので気は焦るが、なかなかゴールは見えない。じたばたあがきながら、何とか仙遊寺にたどり着く。

5時近くなって、参拝者の姿もほとんどいない。

時間もないので、とりあえず鐘をついて、すぐに納経する。ついでに若いお坊さんに、「今日、宿坊でドタキャンとかないですかね〜」と聞いてみるが、「ありませんっ!」と切り口上で断られた。忙しくて鬱陶しいのはわかるけど、切って捨てられたような気がする。17時ジャスト、出発。

●宿の確保に悪戦苦闘。

今治駅(18:00/61.7km/累計499.1km)

栄福寺を横目に見ながら、今治を目指す。バイパスを離れて、街の中心部へ向かう。ホテル街を探す。1軒のホテル(洋風旅館)の前にクルマやバイクが止まって、中で交渉している気配。混んでいるみたいだ。駅前に回ってみる。近くにコンビニとかないので食事とかめんどくさそうだが、まずは宿を確保しないと。

ホテルの前で電話をしようとすると「お疲れ様です」と自転車に乗った若い衆が声を掛けてきた。「はあ?」「自分もへんろです。バイクへんろで回ってます」と真っ黒に焼けた顔でにこっと笑う。「宿で自転車を借りて、街を見物してるとこです」。「ああ、どーも」。「何してるんですか?」「宿を予約しようと思って。そういえばどこに泊まってるんですか?」「××ホテルです」「そこ、空いてますかね?」若い衆は気の毒そうな顔をした。「今日は満員みたいですよ」。

聞くとホテルはどこも随分混んでるみたいだ。悩んでいると、「駅の観光案内所で聞いてみたらどうです?」。バイクへんろがアドバイスしてくれた。その手があった。お礼もそこそこに、駅に向かう。バイクへんろ君、ありがとう!

観光案内所のオネエさんは、「泊まる所」というと、間髪入れず「全滅です。今治は全部満室です」という。ひえ〜っ、そこまで厳しいとは思ってもいなかった。今までのGWでも、ホテルは何とかなったのに。

「どこかないかしら?」と粘ると、「松山だったらあるかも。道後温泉もあって、宿泊施設の数が違うから」。そう言われればそうだ。オネエさんはてきぱきと、松山行きの特急の時間も調べてくれる。18時46分の松山行き。あと30分ほどある。

●まさかこんなことになるとは・・・。

ホテル NaNa(20:01/-km/累計-km)

「自転車を預かってくれるところはありますか?」「駅の横に駐輪場があるから、そこに停めたら?」ということで、駐輪場へ。大きな駐輪場があった。隙間を見つけて自転車を押し込む。それからサイコンやらライトなど、外せるものは全部外す。その後、みどりの窓口へ。特急券を買ってホームへ出てほっと一息。19時23分、松山着。この間、切符を失くすといったハプニング(死語)があってよれよれになりながら、松山の観光案内所へ。この間、ひたすらぐったりと電車に乗っていた。

松山の案内所は幸い空いていたので、カウンターにダッシュする。40年配の男性が担当だった。「宿を」「いやー、松山中の宿が満室なんですよ」「道後温泉も」「ええ」「そこを何とか」「何ともなりません」「・・・・」。

とんでもない展開になってきた。この時期何回か回っていて、宿で困ったことはなかったのに。どうしよう。しかし根が「なんとかなる」という楽観主義なので、すぐに攻め手を思いつく。「ネットカフェはありますか?」「ああ、それなら駅前にありますよ」といって、電話してくれた。「8時過ぎると安いそうです」とのこと。パックで2400円ほど。駅からも見えるところだそうだ。

しかしネットカフェかぁ。今朝、イビキで怒られたばかりだし。ちょっと自信ないな〜。で、再びひらめいた。「ラブホはありますか?」「それはここではわからないねー。ラブホテルの案内は観光案内所では扱っていないので。でも郊外に行かないとないですよ」。真面目そうな担当者のおじさんはそう言った。

ネットカフェでイビキがうるさくて怒られるより、ラブホがよさそうだ。こんな時はタクシーに限る。松山駅のタクシー乗り場でタクシーに乗りこみ「どこか泊まれるラブホテルまで」と言った。泊まれる宿がなくて困っていると話すと、タクシーの運ちゃんはセンターに無線で問い合わせてくれた。センターが何軒かホテルを探してくれたが、満員か、遙か遠いかのどちらか。で、繁華街のラブホにつけてもらう。やっぱり近くにラブホはあったのだ。

「ラブホテルは1人の客は嫌がるから、ダメだったら次に行くので」というタクシーに待ってもらって、入り口へ。館内電話で、「1人だけど泊めて」と頼む。「・・・・・(どうしようかな〜、という雰囲気の間)。いいですよ。」「いくら?」「今、ABルームしか空いてないので(なんだそれ?)、1万円になります」「な、なんだってー!」と言いたくなったが、現在の喫緊の課題は宿泊施設の確保。臥薪嘗胆、韓信の股くぐり。「じゃ、それで」。やっぱりここも、20時すぎると安くなるとかで、20分ほど時間をつぶし、中に入る。

まず食料の確保だ。電話で聞くと外出はできるが、会員カードを作れという。いいけど、二度と来ないのに、資源の無駄だな。で、部屋を出て駐車場へ。そこへアベックが入ってきた。目を逸らしてチラ見すると、普通のご夫婦。手にはコンビニ袋いっぱいの食料。おお、ご同輩。やっぱりこの時期、ラブホ難民も多いようだ。館内電話でコンビニの場所を聞くと「わかりにくいので行きます」とのこと。すぐに二十才そこそこの若い衆が出てきて、丁寧に教えてくれた。歩いて3分ほど。

弁当と酒を調達してホテルにもどる。食事をしてから風呂に入ってさっさと寝る。今日はほんとに疲れた。京屋で一緒になった大阪のご夫婦はなんとか宿が見つかっただろうか。あの時ラブホのことを思いついていたら。そんなことがふと頭をよぎった。

累積標高720m

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