自転車なお遍路イメージ
2005年春
はじめに
5月2日(往路)
5月3日(1〜11番)
5月4日(12〜17番)
5月5日(18〜22番)
5月6日(復路)
2005年夏
7月15日(往路)
7月16日(22〜23番)
7月17日(24〜27番)
7月18日(28〜32番・復路)
2006年春
4月29日(往路)
4月30日(32〜36番)
5月1日(37番)
5月2日(38〜39番)
5月3日(40〜43番)
5月4日(44〜45番)
5月5日(46〜51番・復路)
2007年春
4月27日(往路)
4月28日(51〜58番)
4月29日(59〜64番)
4月30日(65〜66番)
5月1日(67〜76番)
5月2日(77〜83番)
5月3日(84〜88番)
5月4日(1番・復路)
2007年冬
12月8日(高野山)

■七子峠のアイスクリン

七子峠

(11:00)

朝6時起床。6時半朝食。朝食は夕食ほど豪華ではなく、普通の民宿なみだった。同宿の車遍路のご夫婦とちょっと話す。しかし、何だか話がかまない。

7時出発。

今日は半袖ジャージにアームウォーマーで走る。アームウォーマーは、冬のマラソンで選手が腕に着けている、袖だけの布。軽くて温かいし、取り外しも簡単なので普段から重宝している。手袋は指先の切れた黒いものを使用しているから、ちょっと見、黒い手甲を着けているようだ。自転車で走り始めて5年目、知識も増えるが物も増える。

宿を出てちょっと走ると、昨日のたこ焼きお遍路を追い越す。
「あれ、どうしたの?」
「いやー、泊まるつもりだった宿に連絡したら、電話が通じなくて。結局この近く泊まりになっちゃった。ははは」
照れくさそうに笑う。楽しそうな人だったので、一緒の宿ならいろいろ話もできただろうに。

昨日渡った宇佐大橋をまた渡り、県道23号を岩本寺に向かって進む。海岸に沿って走る道は、朝と言うこともあって気持ちがいい。ただ海沿いなので風が強い。向かい風の時は、なかなか前に進まず苦労する。30分ほど走ったら体が温まってきたので、アームウォーマーを外す。ついでに日焼け止めを塗る。

やがて道は海を離れて内陸部に入っていく。全体に車の通行量も少なく、走りやすい。山の中に、大きなセメント工場が見える。そこを通り越して、高知自動車道にかかる陸橋を渡ると、前方にヘルメットをかぶった自転車乗りの姿が見えた。後ろから見ているとペダリングが不安定だ。スピードも遅い。

追いついてみる。まだ20代の男性だ。サイクリング用のフラットバーロードに乗っている。
「大丈夫?」声をかける。
「ちょっと膝が・・・」
「バンテリンならあるよ」
「僕も持ってますから」
「無理しないで」
併走しながら、そんな会話をして先行する。カメの僕より遅いのは、だいぶ弱っているせいだろう。

しばらく走ると安和の町に入る。喫茶店が見えてきた。その前で自転車を停めて、後続の若いサイクリスト君を待つ。追いついてきたところを停めて、喫茶店で休もうと誘うが、断られてしまった。
「今日はまだ走らないといけないので」。

今日の目的地は、足摺岬の先だという。大丈夫かなぁ。話の流れで、ケイデンス(ペダルの回転数)の相談を受ける。膝のためにはなるべく軽いギヤで、回転数を上げるようにしたら、とアドバイスをする。人に走り方を教えるなんて、10年早いのだが。

若いサイクリスト君と別れて、一人で喫茶店へ入る。9時20分。まだモーニングの時間だ。500円でモーニングを頼む。アイスコーヒーにトースト、サラダ、玉子がついている。美味しく食べる。30分ほどでスタート。

このあたりから国道56号に入る。まずは焼坂トンネルをクリア。このあたりは序の口だ。道は緩やかに登り続ける。へばるほどではないが、楽ではない。

久礼第1トンネルをくぐる。久礼は、昔「漫画アクション」に連載されていた「土佐の一本釣り」(青柳裕介)の舞台になったところだ。この漫画、特に面白くも斬新でもなかったが、なんとなく目を通さずにはいられない作品だった。久礼漁港も一度見てみたいと思ったが、道は町の上を通っている。町まで降りて、また登る気はしないので、そのまま通り過ぎる。

とくに休むこともなく、ペダルを踏み続ける。いくつかトンネルを通り抜けるてしばらく走ると、目の前に峠道が延びている。ここで一休み。目の前に延々と続く上り坂を見ると、ちょっと気力がなえる。2〜3分ほど脚を休め、気をとりなおしてスタート。

自転車で登るのでなければ、
いい眺めなんだが

ここから本格的な登りになる。ところどころで休みながらもペダルを踏む。しばらく登っていくと、反対車線の車の待避所に、アイスクリン売りのおばさんがいる。休憩がてら寄って見る。

晴れわったって温度も上がってきたせいか、次々に車が停まる。僕も一つ買い、その場で食べる。何でもここで40年、アイスクリンを売っているそうだ。おばさんと話していると、セルシオに乗ってきた男性も話しに加わる。口髭をたくわえた、久礼の網元、といった風情の人だ。
「この味は、高知だけの味やきの」
「そう、この間、長野から来た人が、この味は高知にしかないって、喜んでたわ」 次々にアイスクリン礼賛が飛び出す。
10分ほど話を聞いてから、再び走り出す。

坂はまだまだ続く。いくつか短いトンネルをくぐる。傾斜はそれほど急ではないが、ひたすら登り続けるのがつらい。ただ、午前中で体も疲れていないこともあって、あまりきついという感じはない。

走り出して2時間近く、11時に標高287mの七子峠をクリア。うーん、きつくないわけだ。そんなに高くない。

道は一転、下りとなる。

■尼さんが納経をしてくれる

三十七番霊場「岩本寺」

(11:45/本日42.2km/累計115.1km)

国道56号にそって、気持ちよく下る。気温も上がってきており、風が気持ちいい。

やがて岩本寺の示す看板が見える。スーパーマーケットの角を、町並みの方に向かって曲がる。窪川はこの地域の中心的な町のようで、スナックの看板なども見える。JR土讃線もここが終点。以降は土佐くろしお鉄道となる。

メインストリートの1本裏通りを走っていくと、左手に岩本寺が見えてきた。山門への入り口脇には、品のいい和菓子屋がある。昔から栄えていた町であることをうかがわせる。

入り口にも趣が感じられる岩本寺

岩本寺は5つのご本尊が納められている。そのためご本尊真言を唱えるのに時間がかかる。しかし人も少なく、ゆっくりとお参りできた。

全体に歴史を感じさせる堂楼伽藍だが、平成20年には本堂改築の計画があるらしい。ちょっともったいない気がする。

この本堂が見られるのもあとわずか

ここの納経所では、黒い衣を着た、尼さんが納経してくれた。ご住職の家族とか寺務員さんなど、女性が納経してくれるのは珍しくないが、尼さんの納経は初めのような気がする。知多四国では33番がそうだったが。

12時20分出発。

■四万十川への道

岩本寺から国道に出る角にあるスーパーに入る。それほど空腹というわけでもないが、入って食料品をあさる。結局、おにぎりを一つ買い、日差しがきつかったため、建物の陰で食べる。

今日の札所は岩本寺だけ。ただ走るだけの日だ。それもいいのだが、気分にメリハリがつかない。歩きなら、こんな状態が2〜3日続くこともあるのだから、文句は言えないが。

そんな時、ちょっとヘンなものを発見した。カーブに取り付けられた警報ランプ。ブラインドコーナーから対向車が走ってくると、ランプが赤くなる。対向車がないときは青。親切といえば親切だが・・・。あきれたついでに写真を撮る。

すごく親切な警報ランプ

その後は、多少のアップダウンはあったが、快調に走る。何人か歩きのお遍路を追い越す。そのうちの若いお遍路と、ちょっと話をする。野宿中心に、たまに宿、というパターンで回っているとか。お互いに「頑張ってください」と言って先行する。

疲れているときに、人と話をするとなぜか元気が回復する。ただ休むだけより効果があるようだ。この時初めて気がついた。それこそ気のせいかもしれないが。

とある集落近くを走っていたら、道路の脇にかきつばたが植えられていた。老人会の活動のようだ。紫が色鮮やかなので、ひと時脚を止めて眺める。実は僕が卒業した高校の校章もかきつばた。こちらは全然好きではなかった。

ここ以外でも、各地で
かきつばたの花壇を見かけた

1時間ほど走った。休憩ポイントを、地図に載っているレストランフレンドとする。丘を登った所でレストランフレンドを発見。しかし閉まっていた。入り口のガラス戸に「病気療養中のため休業します」といった内容の紙が貼られていた。

仕方がないので、近くにあるコンビニに目標を切り替える。こちらはちゃんとやっていた。おにぎりでも食べようかと思うが、毎度おにぎりも飽きる。と、隣に喫茶店があるのに気がついた。四国もこの辺りになると、店もコンビニも多くて助かる。

喫茶店に入ると、ママさんが暇そうにしていた。2時頃だから、ちょうど暇な時間なのだろう。アイスコーヒーとミックスサンドを頼む。食べながらママさんと話す。ご主人も最近自転車に凝り始めて、先週もマウンテンバイクで中村方面まで走ってきたとか。そのうち地元の景気の話になって、漁業も土建業も景気が悪く、若い人の働く場所がない。そ-のため、若い人は中村の方に出ていってしまう、などという話を聞いた。

30分ほど休んで、2時45分出発。出がけにママさんが
「きれいな公園があるから見て行って」と言ってくれる。

しばらく走ると、左手の海岸に沿って、大きな公園が広がる。「佐賀公園」。喫茶店のママさん言っていた公園だ。起伏にとんだ広大な園内には、花や樹木も美しく配置され、手入れも行き届いている。しかし、誰もいない、まったく無人の空間である。先ほどの地域経済の話から思うに、この公園、利用するためのものではなく、造ることに意味があったのかもしれない。

道はさらに海岸沿いに続く。「白浜海岸」と看板が出ている。紀州の白浜には行ったことはないが、ここの白浜は岩だらけの浜が続く。このあたりでも何人かの歩きのお遍路を追い抜く。白衣の女性2人と、普通のバックパック姿の若い男性1人の3人連れが印象に残った。追い抜きざま挨拶すると、若い男性がボディーガードのようにきっと目を向ける。そんなに怪しげかなぁ。しかし白衣着てナンパなんてしないだろ、普通・・・。

白浜海岸・・・場所が違うのかな

大方町から道は分かれる。このまま国道56号を走るか、海沿いに県道42号を走るルートにするか。後から考えれば56号をそのまま走ればよかったのだが、坂が少なそうな県道を選ぶ。おかげで随分遠回りをしてしまった。

途中で一休み。そのあたりまでは道路も歩道も広く、ゆっくり休める。靴も靴下も脱いで、地面に座り込む。は〜、気持ちいい。10分ほど脚を伸ばす。

座りながら撮った写真

そこからけっこうアップダウンがあり、道も細くなった。最後はへんろマークを頼りに、急がず田んぼの中を走る。道を聞きながら、マークを確認しながら走ると、四万十大橋に出た。本来ならまっすぐ渡るところだが、今日の宿はここから少し上流になる。川沿いの道を、中村目指して遡る。

■四万十川に到達

コスコ・ビジネス&リゾート

(17:20/本日111.0km/累計168.3km)

そろそろ夕暮れも迫り、雲も出てきたので、期待していた四万十川らしさは感じられなかった。

徐々に交通量が増え、道幅も広くなってきた。中村の市街に入ったようだ。宿はすぐにわかった。モダンな造りのビジネスホテルだ。自転車を停め、フロントのある2階に上がる。若い男女のフロントマンがいる。どちらも一生懸命で気持ちがいい。そこで鍵をもらい、部屋に入る。

くつろぐ前に、まず買出しと洗濯だ。どちらもフロントに聞く。コンビニは歩いて数分。コインランドリーは自転車で数分の距離にあるという。まず、コンビニに行き、明日の朝食のサンドイッチと牛乳を買う。次いで洗濯物を持ってコインランドリーに出かける。

これがなかなか見つからない。聞きながら行くと、ショッピングセンターの駐車場の奥に、隠れるようにあった。さて、と思って料金を見ると、洗い500円、乾燥10分100円となっている。ちょっと高いなぁ。機械は大型のようで、布団なども洗えると書いてある。もったいないので、洗濯を諦めてホテルに戻る。

フロントでその話をすると、男性のフロントマンが
「実はこのホテルにもあるんですが」と言う。
それを先に聞きたかった。聞かなかったこちらが悪いのだが。
「乾燥機の性能が悪くて2時間半ほど回さないと乾かないんです」。
案内してもらって見ると、乾燥機が回り続けている。洗濯だけして、持ってきた洗濯ロープに干すのも考えたが、面倒なのでやめた。まだ着替えは1日分ある。

大浴場で風呂に入ってゆっくりした後、食堂で夕食。トンカツ定食1050円に生ビール550円。つまみに鰯の香梅煮210円。普段飲まないのに、走ったあとの食事では、やっぱり飲んでしまう。うまい。

部屋に戻り、テレビをちょっと見て就寝。

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