2005年夏
2006年春
5月2日(38〜39番)
2007年春
2007年冬
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■足摺へんろ道を気持ちよく走る三十八番霊場「金剛福寺」(11:10/本日46.1km/累計214.4km) 朝6時起き。身支度を整え、昨日コンビニで買っておいた朝食をゆっくり食べる。フロントでキーを返す。フロントに居たのは昨日の若い男性。交代勤務ではなく、徹夜勤務のようだ。人使いのあらい、いや、効率重視のホテルなのだろう。 ホテルを出てしばらく走ると、四万十川にかかる橋を渡る。うす曇の朝の四万十川は昨日と同じで、清流という印象ではなかった。四万十川沿いの道を河口に向かって走る。河口手前で、国道321号は山の方に転じる。少し前まで、四万十川を渡る初崎の渡しがあったが、残念ながら間に合わなかったようだ。
朝は山の中の道も気持ちがいい。走っていると右手に小山が見える。中腹に「大」の文字が。これが土佐の大文字山か。たしかに遊びで造ったような規模だ。しかし地元の人たちが、これを1年を通して維持するのはけっこう大変だろうと思う。
またしばらく走ると、見事な白い髭の、歩きのお遍路とすれ違う。金剛福寺からの打戻りだろう。挨拶をして、延光寺までの道を聞く。金剛福寺を打った後、どのルートがいいのか参考にしたかったからだ。 そのお遍路は、真念庵から抜けて延光寺を目指すという。と教えてもらっても、実の所、地図がしっかり頭に入っていないので、今ひとつぴんとこない。後から地図で確かめよう。 下ノ加江川沿いに走り、やがて河口近くの橋を渡る。ここで一休み。橋を渡る途中の歩道に自転車を停め、足を投げ出して小休止する。野球のユニフォーム姿の中学生が、挨拶をしながら通っていく。ここでアームウォーマーを外す。 温度もさほど高くなく、風もそれほど強くない、絶好の晴天。忘れないうちに、日焼け止めを塗る。歳をとると若者のように、きれいに焼けない。その上、最近、シミのようなものも出てきた。と言うわけで、焼けないのが一番。日焼け止めは必須だ。 以布利から遍路道に入る。ちょうど入り口に、高齢のおばあちゃんと、僕と同年輩くらいのお嫁さんらしき人が、小さなお堂の掃除をしていた。といっても、おばあちゃんは見ているだけ。お嫁さんが熱心に作業している。念のため、おばあちゃんに尋ねる。 昼なお暗き、というほどでもないが、木立の生い茂る小道を走る。一応舗装はされているが、車は軽でもすれ違えないほど狭い。おかげで車の姿も人の姿も見ない。ウグイスの鳴き声だけがこだましている。 昨年、同じ時期に焼山寺や鶴林寺などの遍路道を歩いたが、その時はウグイスはまだ、ホーホケケキョケキョといった不器用な鳴き声をあげていた。しかし今年は、きちんとホーホケキョと鳴いている。地域柄なのか、春が早かったのか。 少し登ってからなだらかな下り坂だ。県道27号に出る。海沿いの対抗2車線で歩道付きの走りやすい道だ。しかし日陰も少なく、アップダウンも激しい。息を切らせて坂を登ると、すぐに下り坂。これはあっと言う間に終わってまた登り、といった具合だ。 何人かの歩きのお遍路を追い抜く。一人、後ろから見て、歩くのがつらそうな女性のお遍路がいた。でも何をしてあげられるわけでもない。他のお遍路と同じように挨拶をして先行する。 ひたすら走っていると、何も考えなくなる。頭の中にメロディーが浮かび、リフレインする。最初は岡林信康の「申し訳ないが気分がいい」という曲が流れていた。『水と緑と動くものと、すべてがそこにつきるはず』。彼の3枚目のアルバムの曲だ。 だが、坂をぜいぜい息を切らして登っているうちに、曲は吉田拓郎に変わった。曲目はもちろん「イメージの歌」。『長い長い坂を登って後ろを見てごらん、誰も居ないだろう。長い長い坂を下りて後ろを見てごらん、みんなが上で手を振るさ』。ぜーぜー。 9時半頃、目の前に休憩所が見えてきた。これを理由に休憩。何人かのお遍路が休んでいた。年配の男性が 食べていると、丸刈りの、まだ20歳くらいの若い男性遍路が話しかけてきた。彼も自転車で回っているらしい。楽しく自転車の話などをする。道に詳しそうなので、次の延光寺までのルートを聞いてみる。 20分ほど休んで、金剛福寺を目指す。さきほどの若い自転車遍路が 足摺岬に近づくと、道は再び木立の中を走る。勾配もなだらかで、気持ちのいい道だ。「足摺へんろ道」という小さな看板が立っていた。頭の中のリフレインは、再び岡林信康に戻る。
木立を抜けると、駐車場があった。足摺岬に着いたらしい。人も車も多い。金剛福寺はその先にあった。寺の前には、土産物屋が並んでいる。 自転車の置き場所を探していると、寺の入り口で托鉢をしていた老遍路が合図する。自分の立っている横を指差して、ここに置けという身振り。自転車を停め、お礼を言って山門をくぐる。 お寺の中は、思ったほど人はいなかった。ゆっくりお参りをし、納経所に向かう。ご住職が納経をしてくれ、納経帖を返してくれる時に聞いた。
山門を出ると、托鉢のお遍路の姿はなかった。ここで食事にしようと、何軒か見てまわる。しかし、どこもあまり変わらないので、一番近い土産物屋の2階にある食堂に入る。中は喫茶店のような造り。窓からの景色は、木立や草ばかりで、期待したような足摺の風景は見えなかった。 きつねうどん550円とアイスコーヒー250円を頼む。食事をして、地図で次の行程をチェック。その後しばらくぼーっと休んでから、重い腰を上げる。 11時30分出発。 ■三原越え(15:00/本日88.9km/累計257.2km) 来た道を戻る。先ほどの自転車遍路は 雲が出てきて、暑さも多少和らぐ。途中、湧き水があった。そこで水を飲み、ついでに日焼け止めを塗る。そこへ若い歩きのお遍路が一人やってきた。荷物が大きいので尋ねる。 気に入った場所には2〜3日とどまるそうだ。水が大好きとかで、ここの水も美味しそうに飲んだ。
「美味しい水ですね。よかったら、コーヒーでも入れましょうか」
湧き水を後にしてすぐ、反対車線を奇声を上げて走ってくる自転車があった。よく見ると、先ほど休憩所にいた自転車遍路だ。奇声と聞こえたのは、挨拶だったらしい。返事をする前にすれ違って去っていった。 おかげで、遍路道を通り過ぎそうになった。遍路道へ入る。来た時は気づかなかったが、入ってすぐ、つまり金剛福寺寄りの所にお好み焼き屋があった。「てまり」という暖簾が出ていた。県道ならともかく、ここで商売になるのかな。遍路道に食堂があるのは、ありがたいことだけど。 1時20分、21号とに分岐する交差点に到着。ここで一休みすることにする。靴下も脱いで、道路に座り込む。は〜。また青空が顔をのぞかせている。15分ほど休憩。通りかかった2人連れのお遍路が、こちらの方を指差して話している。警戒されてるのかと思ったら、座っている僕の背後にあった丁石で、道を確認したようだ。 21号は、確かに勾配もきつくなく、走りやすい道だった。最初は田んぼの中を走っていたが、道はどんどん山の中に入っていく。気がつくと、森の中の一本道を走っていた。車もほとんど通らず、先ほどの足摺へんろ道ほどではないが、気分のいい道だ。今の季節もいいが、紅葉の時期も綺麗だろう。
1時間半ほど走る。三原町の入り口に、食料品店があった。軒先の自販機で飲み物を買っていると、中から店の人らしい女性の声が聞こえた。 「お子さんにもいい思い出になりますねぇ」という意味の言葉だった。 話の様子では、お客はどうやら、親子連れのお遍路らしい。 店から数分走ると、「天満宮」という神社があった。トイレとテーブル、ベンチがあった。ここでドラ焼などを食べ、20分ほど大休止。座ってお茶を飲んでいると、中学生くらいの男の子連れの男性遍路が歩いていくのが見えた。二人とも白衣を着ている。先ほどの親子のお遍路だろう。 「よっこらしょ」と腰を上げて、再び走り出す。と、不思議な光景が見えてきた。牛が草を食んでいる牧場なのだが、高台から低地まで一直線にロープが渡され、数十匹の鯉のぼりが泳いでいる。何かのイベントでもなさそうだし、この牧場の主の趣味なのか?名古屋だったら間違いなくテレビ局が取材に行くだろう。
■夕方、宿&札所に到着三十九番霊場「延光寺」(16:15/本日103.9km/累計272.2km) 30分ほど走ると、ダム湖が見えてきた。ここから宿毛市だ。湖にかかる橋を越えると、道は下り始める。まっすぐ下っていくと、道は国道56号に突き当たる。ほんの少し走ると、延光寺の案内看板が見える。看板にそって山すそを走っていくと、民宿が何軒かあった。今日泊まる、へんくつ屋もそこにある。 荷物だけ置かせてもらい、そのまま自転車で延光寺に向かう。他の宿泊客は、既にほとんど揃っているようだ。 1分も走らないうちに延光寺着。門前に自転車を停めて中に入る。山門は古色蒼然としているが、本堂、大師堂などは新しいようだ。時間が遅いせいか、参拝者も数えるほどしか居ない。
4時45分、へんくつ屋に入る。 僕が一番遅かったようで、食堂では既に食事が始まっていた。すぐに部屋に荷物を運び、おやじさん手づくりという岩風呂に入る。足を十分マッサージしてから上がる。そしてすぐに食事。おかみさんがじっと座っている横で、ご主人がすべて支度する。丼2杯たいらげる。 僕が食事を始める頃には、他の人は食事が終わり、ほとんど残っていなかった。挨拶程度に話はできたが、きちんとした話はできなかった。実はこの宿では、歩きの人たちの話を聞くのを楽しみにしていただけに残念だった。 食後、洗濯機が空いたので、洗濯物をもって浴室に行く。おかみさんが大儀そうに、それでも親切に洗濯機の使い方を教えてくれる。二層式の洗濯機も扱えるつもりでいたが、ここのはシンプルすぎてちょっと難しかった。 洗っている間に、おかみさんとお話をする。 ちょっと愚痴めいた話も聞くが、ひたすら聞き役に回る。ご主人は、おかみさんがそんな話をしている傍らで、黙々と洗い物をしている。適当に切り上げ、部屋に戻り荷物の整理をしていたら、洗濯物の脱水を忘れていた。慌てて浴室へ行くと、いつの間にか脱水が終わっていた。おかみさんがニコニコ笑っている。恐縮してお礼を言う。 洗濯の後、自転車の整備をする。午後走っていたら、フロントから異音が聞こえ出したので、ランプのダイナモなどを調整。ついでにブレーキ位置もいじってみる。横でご主人が、福井から来たという男性遍路と楽しそうに話をしている。物をいじるのが趣味のようだ。今手を入れているらしい焼玉エンジンをかける。すごい音が響く。暗くなってきたので部屋に戻る。。 8時頃、コップを借りに台所へ行った。声をかけたら、おかみさんが奥の部屋から返事した。
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